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かわいい生活

 かわいい生活に憧れる。過剰なフリルがフリフリな感じのふかふかのおベットに寝転がりながら、キラキラのファッション雑誌だのおしゃれなライフスタイル提案雑誌だのをめくり、ときどきフッと片思い中の男の子のことを考える、そんなかわいらしい女の子になりたい。そういう女の子に(恋愛対象として)憧れているのではない。そういう女の子そのものになりたいのだ。そういうまるで現実味のない、浮世とは少し違った世界で生きているような、かわいらしい女の子に。

 その子はまともに食事もしない。なぜならきちんとした食事はダサいから。かわいくないから。食べるのはいつもチョコレートパフェやらシュークリームやらそんなもの。甘くて見た目もかわいらしいものしか口に入れたくない。自分のかわいさを維持するためにも必須の習慣だ。

 なので当然かわいい子としか付き合わないし、お喋りもしない。そしてわたしとお喋りできるほどかわいい子は周りにひとりたりともいないので、わたしに友達はひとりもいない。いつだってわたしはひとりで孤独で唯一無二な「かわいい」をときめかせている。かわいさがあれば世界だって征服できるし、戦争だってなくせる。

 

 そんなふざけた女の子になりたいのだ。いや、なりたいというかそういう女の子を主人公にした映画を撮りたいのだ。そういう、今まで自分に全く接点のなかったタイプの人間(そもそも存在するのかも怪しいけれど)を主人公にした、自分とは全く違う世界で繰り広げられている人間模様や出来事を描きたいのだ。自分が主人公の映画や漫画、詩や小説はもううんざりだ。飽きた。自分はそろそろ自分から離れてほしい。

 

 そもそも男でいることに飽きたんだ。別に恋愛対象としての男に興味を持ち始めたとか、ゲイへの第一歩とかそういう話をしているわけではない。ただ純粋に男でいることに飽きたのだ。道ですれ違う女性をついエロい目線で見てしまったり、むやみに暴力的で自己主張の激しい映画を作ってしまったりする、そういう自分の「男」な感じに飽きたんだ。もっとゆとりや余裕に満ちていたい。もっと「女性」的でありたい。

 そんなことを言うと「女性だって余裕なんかないし大変なのよ」と言われそうだが、そんなこと承知した上での戯言だ。僕はいくら女性的でありたいと願ったところで男でしかないし、死ぬまでずっと女性の本質的なことはわからない。「わからない」とわかった上での願望なのだ。わかってくれ。

 

 もうしばらくは主人公がむやみに走ったり騒いだりする映画は撮らない。作り終わった今の自分みたいに自己嫌悪に陥るだけだ。今度こそおしゃれでキュートな女の子(あるいはそのような心境にあるガーリーな男の子でもいい)を主人公にした綺麗な映画を撮ろう。もう血とか暴力とかうんざりだ。今まで自分は本来好きでもない自分のそういう面を強調して作品として表に出しすぎた。もうこりごりだ。

 そしてこれを書きながら食べ終えた爽の梨味、とても美味しかった。幸せだね!