ザリガニ

 ギャラ交渉したっきりのメールの返信が来ないまま1か月が経った。業界では割とやり手で信頼もあるっぽい人だったのに結局学生のフリーランスもどきにはこういうことするんだなあと思いながらも執着的に何度も催促メールを送り続ける。別にもうお金とかいいんだけど、払うと言ったくせに払わないというその行動に腹が立つので絶対に諦めない。

 8月はずっと映画を撮っていた。自主なのか商業なのかわからない微妙なラインでずっと映画を撮らせて頂いていた。ものすごく協力的で性格もすこぶる良いスタッフと愉快なキャストで映画を撮らせて頂いていた。何度も壁にぶつかって何度も「もう映画なんか二度と撮るかボケ!!!!」と思ったけど、全部全部肥やしになったと思う。映画監督とかそういうのを越えて、ひとりの人間としてたくさんのことを学び、成長できたように思う。

 伊達に何年も映画撮り続けてないので、最近よく褒められることも増えた。信頼されることも増えた。ものすごく期待されているんだなと思う瞬間も増えた。たぶん傍から見たらそこそこ才能のある22歳に見えているんだろう。でも実際の俺はまだ松屋で並盛食べて喜んでるし、人にお金も借りまくってるし、ネカフェで寝過ごして延滞料金払ってるし、入ったお金もすぐお酒と煙草に溶かしてしまう。1ミリも人間ができてないし、人に気遣いとか全然できないし、だから恋人もできないんだろうし、なのに信頼されたり頼りにされることに物凄く違和感を感じる。

 最近になってそういうことをすごく考えるようになった。その矢先に観た大根監督の某新作、完全に自分の心境と合致してめちゃめちゃに泣いた。そしてどれだけ努力してどれだけ生まれ変わろうともがいても、自分は一生水原希子にはなれないんだなと思った。