パッセン者

 ネタバレばっちりで書くので観てない人はそんなに親しくない友達にお金借りてでもパッセンジャーを観てほしい。それから気が向いたらこれを読んでほしい。

 パッセンジャーは、本当に、本当に心から大好きな映画。わざわざこうしてブログで長文を書く気になるぐらいだから、恐らく自分が思っているよりももっとこの映画のことが大好きなんだろう。それはそれは、本当に大好き。ザ・ウォークゴーストバスターズ、マリアンヌ、近年も抱きしめたくなるぐらい最高の映画にたくさん出逢ってきたけれど、このパッセンジャーという映画への好意というか、愛というものは今までとは少しニュアンスが違って、何だか自分を鏡で見つめているような感覚がある(だから好き、という時点でもう完全にナルシスト)

 普通のSF映画にちょっとラブロマンスあるかもね、みたいな宣伝のされかたをしているけれど、実際は全然そんな生優しい映画じゃなくて、ただ男の煩悩と懺悔、成長と開き直りだけが描かれた映画だな、と個人的に思う。

 クリプラはあまりの寂しさにジェニローを起こしてしまうけど、そんなクリプラが寂しさのあまり無責任に「恋人ほしいよ~」と言いまくっていたかつての自分のようで、その序盤でもう心がどんどん死んでいく。寂しさを他人を利用して埋める行為は、他人の命を奪うほどに重い重い罪なのだ。

 こういう、寂しくてしょうがない時にする一目惚れっていうのは、本当の恋ではなくてただの現実逃避にすぎない。現実逃避をしたいがために女の人を犠牲にする男の物語を描いたのが、このパッセンジャーという気持ちの悪い映画なのだ。

 その行為はあまりに相手に失礼だし、結局相手ではなく寂しくて傷ついた自分を癒したいがためだけの目的なので、ただのひとりよがりの自己愛にすぎない。その状況を知った状態で観るあのラブラブな二人の場面の残酷さよ!!観てらんないよ!!もう無条件に今まで好きになってきた女の人たち全員に謝罪したい気持ちだよ!!俺が犯した罪は重かった。許してほしい。本当に、許してほしい。

 というのがクライマックスの乗客全員を救うクリプラの想いなのだと自分は勝手に解釈した。あの映画における乗客全員は、ジェニローただひとりの存在とほぼ同じで、あの「5000人救う!!」という一見かっこいい正義は、たったひとりの女の人へのただの懺悔、反省なのだ。だから本当に泣ける。死ぬほど涙を流したし、これだけのことをしたんだから許してくれジェニロー!!という深い深く願った。完全にクリプラに感情移入しながら。

 で、びっくりしたのが、最終的にジェニローは許すじゃん!!許してくれるってか、愛してくれるじゃん!!これが自分には理解できなくて、なんて懐が深いんだ、女心はわからない、などと思いながら、なんとも言えない気持ちでエンドロールを眺めていた。

 でも、考えてほしい。あれはクリプラの妄想だったのかもしれないし、描かれていないだけでクリプラはめっちゃジェニロー引き留めたのかもしれない。そう考えると、本当に、自分もこの映画もなんて気持ち悪いんだ、もう、気持ち悪い!!気持ち悪い!!大好き!!この映画が大好き!!

 最後はジェニローのモノローグで終わるので、この映画自体がジェニローが書いて後世に残った小説の映画化なのだと考えることもできる。そう考えるとジェニローもこの運命に納得したのだな、と思えるし、男であるこちらとしても罪悪感は薄れる。でも、この脚本はただひとりの男の脚本家が書いたのが現実で、やっぱり男の独りよがりの自分勝手な妄想なのかな、とも思ったりする。それを映像美の映える見せ場で誤魔化してる感じとか、ものすごく共感できる。

 正直この映画を愛の自己犠牲を描いたタイタニックと重ねるという思考回路は本当に気持ち悪いと思うし(でもこれタイタニックじゃんと思う)、相当やばい思想に基づいて作られた映画だと思うのだけど、何にせよ主役ふたりが大スターで映像も綺麗、変態性も露骨に出てないので安心して人におすすめできる。広がれパッセン者の輪!!